福岡は日本海側に面している福岡市をはじめ県内全域、厳冬期は大陸からの寒風の影響で積雪がみられる日もあるものの、年間を通して比較的温暖な気候で、古代から暮らしやすい土地柄として知られています。
そのため白アリにとっても快適な気候となっており、古い木造家屋では在来種のヤマトシロアリやイエシロアリに加え、外来種のアメリカカンザイシロアリの被害も問題になっています。在来種のシロアリと違い、アメリカカンザイシロアリは巣の規模は大きくないものの、羽アリとして飛来して家屋のどこからでも侵入し大抵の木材を食い荒らす厄介な白アリです。
アメリカカンザイシロアリの被害は九州全域で急速に増加していますが、輸入家具などに紛れ込んでいたものが日本の気候にも馴染み、次々に繁殖して増え続けていることから、海外からの貨物を積んだ船が入港する港湾都市を中心に被害が広がっていると考えられています。主に地中から木造家屋の土台に侵入して被害を及ぼす在来種の白アリのほうが深刻という印象がありますが、アメリカカンザイシロアリは在来種と違ってあらゆるタイプの木材を食害し、空を飛んで次のターゲットに移動するという機動力も兼ね備えた白アリです。
在来種の白アリは水分を必要とするため地中付近の湿った木材を好みますが、アメリカカンザイシロアリはカンザイという名称の通り乾燥した木材を好むことから家具類の内部に潜んで日本上陸を果たし、福岡をはじめ九州全域に被害を拡大させています。乾燥した木材だけではなく水分を含んでいる木材にも食害を及ぼすものの、在来種のように水分が必須という訳ではないため乾燥する時期にも活発に活動するという特徴も持っています。在来のヤマトシロアリやイエシロアリは春から梅雨時にかけてが要注意とされる一方、アメリカカンザイシロアリは真夏から秋口にかけての暑く乾燥した時期にも多く発生する上、6月から9月にかけて羽アリがさかんに飛び回り移動すると言われます。
日本の気候風土に馴染んだアメリカカンザイシロアリは、福岡のような人が暮らしやすいエリアでは季節を問わず大発生する恐れがあると考えられています。古い木造家屋の場合は土台から侵入する在来種への対策を強化しつつ、羽アリとして飛来し窓枠や軒先などから侵入して家具まで食害する恐れのあるアメリカカンザイシロアリにも十分に注意を払っておく必要があります。対処するためには早期発見が重要とされていますが、在来種よりも食害のスピードが遅いためになかなか被害に気付きにくいという面があり、住宅の周辺や家屋内でおがくずのような砂状の粒を見かけたら、それがアメリカカンザイシロアリのフンかもしれないと疑ってみる姿勢も大事です。
ガーデニングで利用する木製フェンスやウッドデッキなどがある家庭では定期的に庭のチェックを行うことも早期発見のカギになり、地域ぐるみで対策に取り組むことで被害の拡大を防ぐことにも繋がります。温暖で暮らしやすく景観も良いタウンエリアが多い福岡だからこそ、白アリ被害を他人事とは思わずに、日ごろから羽アリの動向などに注意を払って生活することが有効な対策になります。